JinK: ビショップさん、この前の大統領選挙、投票した?
Bishop: 投票してないですね。海外に住んでても、不在者投票はできるんですけど、
僕は、カリフォルニア州民で、投票しなくても、誰がカリフォルニアを取るのか明確
でしたらかね。でも、今回は、かなり注目度の高い選挙でしたね。
JinK: そうだよね。僕にとっては、アメリカに来て初の米国大統領選挙シーズンで、
興味深かったよ。TV討論会は、8千万人を超える人が視たみたいで、盛り上がって
いたね。いつもこんな感じなの?
Bishop: まあ、今回は特別だったんですが、毎回、大統領選は盛り上がりますよ。それと
比べると、日本の政治は地味ですよね。日本人は政治に対する関心が低い印象が
ありますね。
JinK: そうだね。やっぱり、日本の政治はわかりにくいというのがあるからかもね。
議論しなければならない論点が明確じゃなかったり、議論する順番もぐちゃぐちゃ
だったり、どうでもいいようなことを国会で追求したり、揚げ足を取るような稚拙な
議論も多いからね。
だから、答弁も揚げ足を取られないように無難にまとめようとするとか、聞かれたこと
を答えずに煙にまくみたいなこともあるし。そうすると議論が深まらないよね。
結局、いろいろ議論しているようだけど、論点に対する理解が深まらないし、
結局、前に進まない、うやむやになるとか、強行採決するとかそういうふうになって
しまうよ。
Bishop: その点、アメリカは争点が明確ですね。もちろん、都合の悪い話題だと、
議論のすり替えとかはありますけど、基本的に政治的なスタンスは明確にし、白黒つけ
ようとしますね。
JinK: そうだね。それは、政治家だけじゃなくて、国民のほうもそうだね。アメリカ人は、
政治的なスタンスは明確にする人が多いように思うよ。
支持している政治家とか政策の看板を自分の家の前に立てている人がいっぱいいるし。
それに、車のバンパーとかに政治がらみのステッカー貼っている人も多いね。
日本では、政治家のステッカーを貼るなんて、普通は考えられないよ。
Bishop: 確かに。あまり考えたことなかったんですけど、日本では、選挙期間中は、
選挙用のポスターが貼られるくらいで、個人の家には何も貼らないので、誰が誰を
支持しているか分かりませんね。
JinK: アメリカでは、隣の人が誰を支持しているか分かっちゃうよね。今回はかなり話題に
なったこともあるけど、「えっ、あの家はあの人を支持しているの?」とか思うよ。
もちろん、どの政治家を支持するのかは、個人の自由だから、問題ないんだけど、
それを周りに積極的に公言していくのは、いろいろと問題がおきそうな気がするけど。
日本では、夫婦の間でも誰に投票したかは、あんまり言わなかったりすると思うし、
基本的には、誰を支持するかは、話さない人が多いんじゃないかな?不要なトラブル
の元だよ。
Bishop: へー、そうなんですか?アメリカでは、政治に対する価値観とか支持している党
が違うと結婚できないという人が多いですし、親しい夫婦関係で、そういうことを全く
話さないのは不思議な感じがしますね。でも、意見が違ったら、話さない方が幸せかも
しれませんね。
実は、アメリカでも、公の場や礼儀を守るべき場面においては、政治と宗教の話題に
触れるべからずと言われていますが。
JinK: だったら、なんで、家の前に政治家の名前の入った看板を立てたりするの?
Bishop: いくつか、理由があると思いますね。一つには、アメリカは、価値観や考え方が
多様だから、意見の衝突も多いし、生き抜くためには、自分はこういう風に考えるとか、
自己主張するということが大切だというのはあるかもしれませんね。
日本は、逆に自己主張はしない。守らなければならない暗黙の前提やルールみたいな
ものがあって、それに従っていれば、ぶつかることも少なく、裁判にもならず、社会が
うまく回るというのがあるように思いますよ。
JinK: 面白い視点だね。確かに、日本人は、和を乱さないことが大切で、必要がなければ、
スタンスを明確にしない人が多いし、場の状況に合わせて、スタンスを変える人も多い。
自己主張をすることは、気分を害するし、わがままな行為だと思われることもあると
思う。
Bishop: そうですね。2つ目の理由は、アメリカでは政権が変わったら、予算配分も大胆に
変わり、実生活に影響があるということだと思いますよ。特に、低所得者の場合、生活
保護がなくなるかどうか心配になりますし、最近だと、健康保険がどうなるかという
ことは死活問題ですよね。投票が命がけとも言えます。日本では、何がどう変わったか
わかりにくいですからね。
JinK: 確かに。それは、身近でも感じることだよ。教育関連の予算が削減されるみたいで、
最近、寄付をしてほしいというメールがくるよ。
Bishop: そうなんですよ。リーダーが変わると本当に影響が大きいんですよ。
あともう一つ考えられる理由は、スポーツと同じように、みんなで盛り上がる知的
エンターテイメントショーみたいなところがあるのかもしれませんね。小学生の時、
家族が応援していた政治家が選挙で負けて、両親が落胆してしまって、泣いたことを
思い出しますよ。スポーツで応援している地元チームが負けて、がっかりする感覚と
似てますね。日本でも応援している球団やアーティストのステッカーは貼りますよね。
あれと似た感覚です。
JinK: 日本では、一部の人を除いては、そこまでの熱意をもって、しかも公に政治家を
応援することはないと思うな。あまり明確な主張をすると危険思想の持ち主と思われる
からね。その点、アメリカのいいところは、人と意見を切り離し、意見の違いを尊重
するところがあるように思うよ。日本人は、意見が違うと人格まで憎むみたいなところ
があるから、なるべく、意見は言わないほうが安全策という考え方だね。
Bishop: そうなんですね。ところで、JinKさんは、現政権についてどういう意見を
お持ちですか?
JinK: ビショップさん、そういうこと聞くかな!もちろん、思うところはいろいろあるけど、
アメリカでも、その質問は、politically correctじゃないと思うし、日本人としても、
アメリカ国民が決めたことに無責任に口出しすることは、憚られるな。
Bishop: そうくると思いましたよ。和を以って貴しとなすですね。じゃあ、オフレコで
議論しましょう。
JinK: ビショップさんわかっているね。それが日本流だね。
ファクト#23:日本では政治的なスタンスを公言しないことが多く、ステッカーも貼らない