Bishop: JinKさん、昨日、困ったことがありまして。
JinK: どうしたの?
Bishop: 近所に新しい居酒屋を見つけたんですよ。値段も手頃で、ネットでも
いいコメントが多くて。
JinK: 今のところ、いい話みたいだけど。
Bishop: そうなんですよ。それで、その居酒屋に、妻と行ってきたんですよ。
JinK: 美味しくなかったの?
Bishop: いや、すごく美味しかったんですけど。
JinK: よく分かんないな。何が問題なの?
Bishop: えーっと、欲張り過ぎちゃって(慣用句で、目が胃よりも大きかった)。
つまり、いっぱい頼みすぎちゃったんですよね。
JinK: あーなるほど。
Bishop: 問題なのは、持ち帰りにしようとした時のことですよ。お店の人に、
持ち帰りにしてくださいって頼んだら、ダメって言うじゃないですか。
JinK: そうだね。日本では一般的だね。
Bishop: でもお金払っているんですよ。その料理は私のものじゃないですか。
お店に何の権利があって、持ち帰らせないんですか?
JinK: 日本は高温多湿で食べ物が悪くなりやすいし、食中毒みたいな問題が
起こると困るからね。食品衛生法の基準が厳しいし、持ち帰る場合は、
お客様から申し出があって、かつ、問題が起きたとしてもお客様が責任を
負うと同意することが必要だね。理屈上は、できないわけではないんだけど、
現実的には、食べ残しの持ち帰りは認めない場合が多いね。問題が起きると、
お客様の責任といっても、お店の評判はガタ落ちだから。
そんなリスクは取れないよね。
Bishop: でも、食べ残しを捨てるのは、なんというか、資源の無駄遣いですよ。
日本人は、そんなもったいないことを避けると思ってましたよ。
JinK: それは、ものの見方の問題だと思う。確かに、アメリカでは、たくさん
食べ物を頼んで、半分ぐらい残すのをよく見かけるよ。それは、かなり
もったいないね。
Bishop: そうですね。あれは、もったいないですね。
JinK: アメリカは、1人前の量が半端ないからね。食べすぎるか、家に持ち帰るか、
捨てるかしかないよね。だから、家族で、外食するときは、4人で3人分頼んで、
みんなでシェアするようにしているよ。
Bishop: それは、いいやり方ですね。
JinK: 日本の場合は、一人前の量が食べきれるようにしてあるから。食べきれる量
だけ頼むが基本だね。それに、食べ残すのは作った人に失礼にあたるし。
食べ物は自然からの恵みなので、残すとバチがあたるという感じというか、
罪悪感があるよ。
Bishop: そうなんですね。でも人によって好みも違うし、食べられる量も
違うんじゃないですか?
なんか、一つのやり方を押し付けているような気がしますよ。
JinK: そうだね。少なめにしたり、大盛りにしたり、一品追加したりと細かい
調整はできるけど、基本的には、出されたものを残さず食べるのが基本だね。
食べ物の好き嫌いをいうのは、贅沢、あるいは、子供っぽいと思われる。
Bishop: ということは、食べたくもないのに、食べることもあるということですか?
JinK: そうだね。特に、公の場ではね。僕も、30年近く前にタイに留学した時に、
そういう思いをしたよ。
Bishop: どういうことですか?
JinK: お世話になったタイの大学の教授のうちで、果物のドリアンを出されたんだ。
しかもかなり大きいやつ。教授は、「これは、食べ物の王様と言われているんだ」
って自慢げに勧めてきたんだよね。ドリアン知っている?
Bishop: 知ってますよ。あの匂いのきついやつですね。
JinK: そうそう。僕も初めて見るフルーツで、あの匂いにまいっちゃったね。でも、
教授が勧めているのに、断るわけにもいかないし、苦手だというのは失礼にあたるから、
一生懸命食べたんだよ。匂いを嗅がないように、味合わないように、ドリアン
ひとかたまり、なんとか飲み込んだよ。内心泣きたい気持ちだったけど、
自分が我慢すればいいことなら、我慢する。失礼にあたるより、我慢すること
を選ぶんだよ。学生で、真面目だったしね。
Bishop: よく食べ切れましたね。
JinK: そうそう。教授も笑いながら言っていたよ。日本人で、ドリアンを最初に食べて、
食べきれるのは珍しいねって。冗談半分だったんだよね。ドリアンは、食べ慣れる
と病みつきになるらしいんだけど、僕の場合は、やはり苦手だね。
Bishop: それは、災難でしたね。でも、苦手でも食べ残しをしないんですね。確かに、
みんなで旅行に行って、旅館でみんな同じものを出されても、文句もいわずに、
美味しそうにきれいに食べていますもんね。
JinK: 日本だと、食べ物のはずれも少ないし、だいたい美味しいよね。それに比べる
とアメリカは、すごいね。予想と違う食べ物も出てくるし、アレルギーや
ベジタリアン、グルテンフリーなど、いろいろ気をつけなきゃいけないことが
多いし。サンドイッチやピザの選択肢も多いよね。慣れると、なんでもありで、
自分の好きなものを頼めばいいんだけど、最初は戸惑うよね。選択肢が
多すぎるのも、大変だよね。
Bishop: 自由の国アメリカですから。日本のマナーの良さは、すばらしいと
思いますが、やっぱり、自分が好きなようにカスタマイズできるのはいいですよ。
JinK: 自分が好きなようにカスタマイズできているはずなのに、なんで、あんなに
食べ残すんだろうね?
Bishop: そうですね。「時に、目は、胃よりも大きいといいまして…」
Fact #9: 日本のレストランでは、ほとんどの場合、食べ残しの持ち帰りはできない
by Bishop & JinK.